発表・掲載日:2025/04/24

今年のGWは町工場も11連休!

ーー進む労働環境改善とトランプ関税の影

 今年のゴールデンウイーク(GW)は、8〜11日間の長期休業を取る町工場が目立っている。かつての、連休直前に受けた注文を休み返上で泣きながらこなした姿とは様変わりだ。発注側を含め働き手確保のため労働環境改善の意識が高まっていること、発注側・受注側の力関係の変化、エネルギー価格高騰に対応した効率的な稼働ーといった要因が絡み合い、町工場の「豊かなGW」につながっている。ただし、そこにはトランプ関税による世界経済への影響も影を落とす。

今年のGWは町工場も11連休

(本文と関係ありません)


休み返上の納期対応は昔の姿に

 町工場が集積する東京都大田区。試験片加工の昭和製作所(大田区大森西)は、4月30日(水)から5月6日(火祝)まで7連休とホームページに掲載した。昔のように『連休前に発注して連休明けすぐの納品を求める顧客』がほとんどいなくなり、この数年は顧客の大手企業の配慮に感謝しながら連休を長期化してきたという。
 社員の労働環境の改善、有給休暇の消化を促す狙いもある。今年のGWは、前半の飛び石3連休と後半の4連休の間に3日間の平日がある。同社では会社のカレンダーは休日と入れ替えて連続休業とした上で、会社の長期休暇を対外的に公表することで社員が有給休暇を申請しやすい雰囲気を作った。「活躍している社員ほど休まないので、有給休暇を取りやすい環境を用意した」(舟久保利和社長)と話す。

電気代が上がり飛び石稼働は非効率に

 大手自動車メーカーは、GWや夏休み・年末年始に会社全体で10日前後の長期休暇を取る。町工場でも自動車の仕事を専門にするところは早くから顧客に合わせて長期休暇を取ってきた。現在の特徴は、他の業種の複数の取引先を持つ町工場でも、長期休暇の傾向が出てきたことだ。
 樹脂切削加工のケィディケィ(大田区大森西)は4月21日、自社のFacebookページで「本日の朝礼にて4/26より5/6までGW休業となりました旨、宜しくお願い申し上げます」と11連休を公表し、町工場仲間の注目を集めた。当初は前半3連休+後半4連休を予定していたが、社員の提案を受けて有給休暇の取得奨励日を設け、佐藤武志社長が対外的に11連休を宣言した。
 佐藤社長は、町工場が長期休暇を取る傾向には3つの要因があると指摘する。

 1)電気代が上がり、機械の稼働・停止を繰り返すのが非効率になった
 2)コロナ禍の間に長期休業に耐える経験を積んだ
 3)人手不足で賃上げや労働環境の改善が必要になった

まだ見えないトランプ関税の影響

 同社が今回の長期休業を決めた背景には、もう一つ、トランプ関税による世界経済への影響がある。「主要な取引先である半導体業界は、米中対立が激化するなかで今後の製造拠点や国際的な開発協力の枠組みが見えないため、仕事の動きが停滞している。11連休の間、体力とお金を温存しながら次の展開をじっくり考える」(佐藤社長)という。
 自動車部品を手がける上田製作所(大田区大森南)は、ほぼ例年通り4月26日(土)から5月5日(月祝)までの10連休とした。上田大輔社長は「トランプ関税の影響は今のところなく、今後もないことを祈っている」と話す。トランプ関税の町工場への影響は現状ではまだら模様で、「自動車も半導体も仕事は止まっている」との意見があれば、「量産部品は影響あるが、研究開発関連の試作部品には影響がない」「自動車の量産部品も止まってはいない」など、業種や業態によって反応はさまざまだ。
 今後はどうか。米国が製造業の復権を目指し、中国が低コスト生産だけでなく研究開発分野を強化するなか、間に立つ日本は何をするべきか。大手も町工場も、深く考えるGWになりそうだ。

株式会社 昭和製作所
所在地:東京都大田区大森西2-17-8
代表者:代表取締役社長 舟久保利和氏
設 立:1952年
株式会社昭和製作所のホームページは、こちらから。

ケィディケィ株式会社
所在地:東京都大田区大森西4-4-23
代表者:代表取締役 佐藤武志氏
設 立:1971年(創業は1969年)
ケィディケィ株式会社のホームページは、こちらから。

株式会社上田製作所
所在地:東京都大田区大森南4-13-7
代表者:代表取締役社長 上田大輔氏
設 立:1953年
株式会社上田製作所のホームページは、こちらから。